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Special Thanks!Illust:くのん

さてと、俺は事後の心地良いけだるさを独り楽しんでいたわけだが、
シャワーの音を聞いているうちにまたちょっとムズムズしてきてしまった。

昼間の疲れを差し引いてもあと一戦ぐらいいけそうな気もする。

というか、やっぱりまだしたい。

でも、身体を流した後で押し倒したら絶対セリスにぶっ飛ばされるよな。
何とかしてきっかけを作る方法は無いものか。

……・。
……!
思いついた。
…よし!





Lovers Trap
――――――――――――――――――――――――




蛇口をひねる音がした。そろそろか。
なるべく自然にタオルケットをはだけさせ、
なるべく自然に手足をベッドに投げ出す。
OKだ。バスルームのドアの開く音に合わせて、さっと目を瞑る。

「…ロック?」

いい反応だ。俺は安らかな寝息を立ててみせる。
こうして寝たふりをすればセリスはきっと俺の顔を覗き込む。
もしセリスが脈アリならきっと俺の唇にキスしてくるはず。
そうしたらぎゅっと抱きしめてもう一戦、だ。
してこなかったらこれは多分求めたってアウト。その時は残念だがあきらめるしかない。
セリスのこと試すみたいだけど、たまにはこういう男の遊び心を許してほしいもんだ。

「寝ちゃったの?」

木の床に湿った足音を立ててセリスがゆっくりと近づいてきた。その音に合わせて予想してみる。

キスする。キスしない。キスする。キスしない。

花占いか!
自分で自分に突っ込み、笑いそうになるのを必死にこらえる。
セリスが果たしてどうしてくれるのか、無性にわくわくしてきた。


枕元でセリスの気配が止まる。ベッドに上がってこないな。もしかして、俺の企みに気が付いたか?
目を開けたいが、我慢だ。
…動かないな。
まさか、半裸の俺を見てイケナイ妄想とか・・・!?

おいおい、そんなことするぐらいなら直に触ってきてくれよ。そうしたらすぐにでも始めようぜ。
マットレスが傾いて、スプリングが鳴った。お、やっとベッドに乗ってきたか。
湯上りの柔らかい空気が俺の冷えかかった肩を撫でてきた。
この焦らし上手め。早く手で撫でて下さい。

気配が一段と近付いて、石鹸の香りと共に乾きかけの髪が頬に触れる。
セリス、こんなに顔を近づけて、さてはキスする気満々だな?
そういえばシャワーを出てから下着を着けているかどうかを確認していなかった。
距離感からして今目を開けたら絶景を拝めるんだろうが、たぶん地獄も一緒に見る。我慢、我慢。


ん、まだ俺の顔見てるのか。ワイルドな寝顔を演出してるつもりだがそそるかな?

「ふふっ」

おいっ、なんで笑うんだよ!何考えた?ガキっぽいとか思ってないか?ちくしょー。
あー、でもこういう風に笑うセリスって可愛いんだよな。今どんな顔してるんだろ?
くそう、もうやめちまおうか。…いやいやムードは悪くない。もうちょっとだ。

なでなで。

おお、髪をなでてくれた。俺、これ好きなんだよなあ。
ティナにふかふかされてるモグってこんな気分なんだろうか。
なんだよ、前髪に指なんか絡ませて。セリス俺のこと好きだろ?
そうそう、もう少しなでてもいいぜ、これだけでも結構満足…
……



…はっ!

いけねえ、寝るところだった!あっぶね〜。
確かに昼間の戦闘ハードだったからな。この体勢だと本当に寝ちまうかもしれない。
ちょっと向きを変えるか。

「…あっ…」

セリスが指を引っ込めたのがわかった。
・・・ああ、そういえばあの時の一戦で肩に怪我してたんだっけ。
背中側だったからさっきは脱いでも気付かなかったか。

「ひどい跡…」

俺の回復魔法って傷口は塞がるけど痣とか残っちまうんだよな。すんませんね、下手で。

「気付かなかった…」


そんな申し訳なさそうな声で言わなくていいんだぜ、セリス。
気付かせないのは男の甲斐性ってもんだ。
ん、なんだ、肩に体重がかかって…髪の感触と、この濡れた暖かいふくらみは…

唇?
傷跡にキスしてる?

いつもなら絶対にこんなことしないのに?いや、俺の知らない時はしてるってこと?
ああ…あったかいな。



…結構長いけど、いつまでしてるんだろう。俺の方がドキドキしてきた。
そこも嬉しいけど、唇にもしてくれよ、く・ち・び・る!
いや待てよ、腕を伸ばしたら届くんだ。
可愛い奴め、こうなったらもう抱きしめるしかない!


「やだ、私ったら!」

!!

…早まるところだった。危ねえ。
しかも思い切り傷跡を押さえつけられた。マジで痛い。

「起きてないわよね?ああっ、変な跡ついてないかしら…ケアルラ!」

穏やかな熱が肩に集まり、閉じた瞼の向こうに心地良い光を感じる。
鈍い痛みが和らいでいくのがわかった。
証拠隠滅なんだろうけど、残念だったな。俺が知ってるってわかったらどんな顔するだろう。
ついでにあんな顔こんな顔も見せてもらうとしよう。お礼はたっぷりしてやるぜ!

この魔法が終わったらもう俺からキスをして…それでぎゅっと魔法をしたら…

ん?俺が終わったら…


いやいや、何だっけ、ええと、魔法からキスを…



……
……
……ぐー。



光が収まりすっかり消えた肩の傷跡に安堵すると、
セリスはもう一度ロックの寝顔を眺めた。

伸びた前髪に隠れがちになる面差しは歳相応の青年らしさを帯びて、
普段気にしていない年齢差を意識せずにいられない。
それがセリスには何となく悔しく、たまらなく愛しい。


(…本当に寝てるのね)

セリスは少し残念そうに苦笑すると、そっと隣に寄り添ってその唇にキスをした。



おやすみなさい、よい夢を。





―――――――――――――――――

■Lovers Trap■

セリスが帝国にいた頃は皇帝なりシドなりレオなり、
部下なんかも結構年上の男性ばかりが近くにいたと思うのですよ。
なので、ロックの25歳というのはセリスにとっては実は年上の範疇に
入らないのではないかと。
で、ロック自身もそれに気が付いていて
「こいつまた俺のこと子供扱いしてバーローw」と
何かとお姉さん顔するセリスを内心子供扱いしていればいい。


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